【実はとても難しいテナント退去】
古くなった賃貸物件をお持ちのオーナー様について、建物の建て替えを検討するようなケースは多いのではないでしょうか。
そして、既存建物にテナントが入居している場合、テナント様に退去してもらう必要がでてきますが、実はこのテナントの退去、非常に難しいのです。
そもそも不動産の賃貸借契約に係る「借地借家法」という法律は、テナント保護の性格が非常に強いものとなっています。そのため、オーナー都合でテナントを退去させる場合の制約がきつくなっています。
特に退去が困難となるケースは以下です。
〇テナントが店舗の場合
テナントが店舗の場合、売り上げが既存店舗の立地に依存している場合もあり、店舗が移転した場合の売り上げを担保することが難しくなるため、移転交渉は難航しがちです。
移転を了承したとしても、移転に係る期間の営業補償や新店舗の内装工事費等、補償金が多額になることが多くあります。
賃料の10年分の補償金を求められるケースもありました。賃料10年分もの補償金を支払うのであれば、何のためにオーナー業をしてきたのか、分からなくなります。
〇テナントが高齢者の場合
居住用物件の場合、移転先の住居探しを求められるケースがありますが、テナントが高齢者の時は新たな住居探しが難航しがちです。
というのも、近年高齢者の孤独死が問題となっており、移転先住居のオーナーにとって、高齢者を受け入れることはリスクに感じられることから、高齢者の受け入れが拒否されることが非常に多いのです。
建物が新しい場合は、問題ないのですが、築年が古い物件ではその建物をどうするのか、という出口戦略が重要になってきます。そして、その出口戦略の自由度を高めるためには早い段階から賃貸借契約を、法廷更新のある「普通賃貸借契約」ではなく、契約更新のない「定期賃貸借契約」にしておくといった対策が必要となります。
投稿者プロフィール
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1976年、栃木県生まれ。横浜国立大学卒業。近畿日本ツーリスト株式会社、株式会社有線ブロードネットワークス(現・株式会社USEN)、株式会社アグレックスなど、さまざまな業界を経て平成20年に不動産鑑定士試験論文式試験に合格、平成23年不動産鑑定士登録。一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター代表理事。
不動産鑑定士試験合格後、都内の不動産鑑定事務所において約2年間、不良債権に係るバルクセール案件の評価、メガバンク依頼による関連会社間における不動産売買にかかる評価など、年間100件以上の案件を手がける。
平成24年かんべ土地建物株式会社に入社後、30億円規模のリノベーションマンション、50億円規模のマンション予定地の売買価格の評価から、借地権及び底地の売買価格の評価まで幅広い案件に携わっている。
実際のマーケットを重視した適正・中立な鑑定評価を心がけ、近年は単なる鑑定評価に留まらず、遺言書の作成・遺留分の減殺請求・借地権や共有の解消といった不動産・相続問題のコンサルティングに力を入れている。
趣味はフットサル、サッカー観戦、料理(得意料理は煮魚)、旅行。
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