【共有不動産で困ること】
共有不動産であっても、共有者の一人がその持ち分に応じて、単独利用が可能であるということは以前説明しました。
しかし、共有者が単独で行うことができない行為もあります。では、どのような行為について制限が生じてくるのでしょうか?
まず、利用以外に共有者のなしうる行為は以下の3つに分けることができます。
①保存行為
②管理行為
③変更・処分行為
①保存行為
共有物の現状を維持する行為をいいます。例えば、建物の修理修繕や建物の不法占拠者の明渡請求などが該当します。
⇒共有者が単独で行うことができます。
②管理行為
共有物の変更に至らない程度の利用・改良行為をいいます。例えば、共有建物のリフォーム(改造に至らない程度)、共有建物の賃貸借契約などが該当します。
⇒共有者の持分価格の過半数に相当する同意が必要となります。
③変更・処分行為
変更行為とは、共有物の主要な性質、用途等を変更する行為をいいます。例えば、共有建物の増改築、共有不動産全体についての抵当権の設定などが該当します。
また、処分行為とは、共有物の売却や共有建物の取り壊しなどが該当します。
⇒共有者全員の同意が必要となります。
以上のように、共有不動産については、その行為が上記のいずれに分類されるかによって、他の共有者の同意が必要になり、必要となる同意者の割合も異なってきます。
特に、共有不動産全体を売却する場合には共有者全員の同意が必要となるので注意が必要です。ただし、自身が所有する共有持分のみであれば、当該共有者単独で売却することが可能となります。
投稿者プロフィール
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1976年、栃木県生まれ。横浜国立大学卒業。近畿日本ツーリスト株式会社、株式会社有線ブロードネットワークス(現・株式会社USEN)、株式会社アグレックスなど、さまざまな業界を経て平成20年に不動産鑑定士試験論文式試験に合格、平成23年不動産鑑定士登録。一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター代表理事。
不動産鑑定士試験合格後、都内の不動産鑑定事務所において約2年間、不良債権に係るバルクセール案件の評価、メガバンク依頼による関連会社間における不動産売買にかかる評価など、年間100件以上の案件を手がける。
平成24年かんべ土地建物株式会社に入社後、30億円規模のリノベーションマンション、50億円規模のマンション予定地の売買価格の評価から、借地権及び底地の売買価格の評価まで幅広い案件に携わっている。
実際のマーケットを重視した適正・中立な鑑定評価を心がけ、近年は単なる鑑定評価に留まらず、遺言書の作成・遺留分の減殺請求・借地権や共有の解消といった不動産・相続問題のコンサルティングに力を入れている。
趣味はフットサル、サッカー観戦、料理(得意料理は煮魚)、旅行。
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