【建物価格がマイナス?建付減価とは】
鑑定評価特有の考え方の一つに「建付減価」というものがあります。これは、土地と建物一体としての価格が、土地のみの価格を下回ることを言います。
もっと端的に言えば、建物価格がマイナスということになります。
通常土地の上に建物が建っている場合、土地の価格と建物の価格を足せば土地と建物一体の価格、ということになります。
しかし、状況によってはそうはならない場合があります。
例えば、一般的な戸建住宅地において、ボロボロの建物が建っておりそのままでは使えないとき、一般的な消費者はその建物を取り壊して新たに戸建住宅を建てることになります。この場合、購入者は土地価格から既存建物の取り壊し費用を引いた、割安な価格で購入しないと経済合理性が合わなくなります。
このケースでは以下の関係式が成立することになります。
(土地価格)-(解体費)=(土地建物価格)<(土地価格)
このように現況の建物があるせいで、土地建物一体としての価格が、建物が存しない場合の土地価格を下回ることを「建付減価」と言います。
上記のような場合の他にも、以下のような場合に建付減価が生じることがあります。
○容積率が高く、高層の建物が建てられるような高度商業地域内において、低層の自用の建物が建っている場合
○商業地へと移行しつつある地域にあって、古くからの自用の倉庫・工場が建っている場合
不動産鑑定評価において、この建付減価が生じているか否かは、前回までに説明した、対象不動産の最有効使用に基づいて判断することになります。
投稿者プロフィール
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1976年、栃木県生まれ。横浜国立大学卒業。近畿日本ツーリスト株式会社、株式会社有線ブロードネットワークス(現・株式会社USEN)、株式会社アグレックスなど、さまざまな業界を経て平成20年に不動産鑑定士試験論文式試験に合格、平成23年不動産鑑定士登録。一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター代表理事。
不動産鑑定士試験合格後、都内の不動産鑑定事務所において約2年間、不良債権に係るバルクセール案件の評価、メガバンク依頼による関連会社間における不動産売買にかかる評価など、年間100件以上の案件を手がける。
平成24年かんべ土地建物株式会社に入社後、30億円規模のリノベーションマンション、50億円規模のマンション予定地の売買価格の評価から、借地権及び底地の売買価格の評価まで幅広い案件に携わっている。
実際のマーケットを重視した適正・中立な鑑定評価を心がけ、近年は単なる鑑定評価に留まらず、遺言書の作成・遺留分の減殺請求・借地権や共有の解消といった不動産・相続問題のコンサルティングに力を入れている。
趣味はフットサル、サッカー観戦、料理(得意料理は煮魚)、旅行。
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