円満な相続の秘訣

私の父親の相続にあたり、円満な相続の秘訣について書いてみたい。

不動産相続の場合、「不動産の共有は避けたほうが良い。」というのが定説である。

理由は、将来もめる可能性があるからだ。

 

しかし、私自身は実家を兄弟妹の三人共有にて分割協議を終える。

実家には、母親亡きあと30年近くに亘り、父親の面倒をみていた妹が居住する。

兄と私は、実家とは別の場所に暮らしているが、双方とも家を所有しておらず賃貸である。

この様な場合、家を売却して換金し分割することが合理的な考えともいえる。

 

父親が自身の病状を知った後、最初に子供達に伝えたことは。

妹が生活に困らないように居住し続けること、そして、実家の持ち分については節税の観点からも、妹に過半を相続させたいとの事だった。

そして、何より「子供達は仲良く暮らしてもらいたい」という願いを幾度も繰り返し、逝った。

客観的(ある意味他人事)の視点でコンサルティングした場合は、「妹を受け取り人とした生命保険を掛け、代償金を確保しましょう。」

などの提案をするかもしれない。

しかし、家族には他者には理解できない価値観が存在する。

幸いにして、兄も私も住宅を所有することへの価値観は低い。

また、兄は長男として、弟の私も妹の兄として、妹が生活に困るような状態にはしたいと思わない。

これは、現在の経済状況が悪くないから、そのように考えられるのだと言う人も居るだろうが、兄も私もそれほど楽ではない。

結局は、相続人の人生観によるのだろうが、特に子供たちの人生観の熟成には、親がどのような言葉を子供たちに掛け続けていたかに大きく左右されるのではないかと思う。

父は愛知県の農家の次男として上京し、その後、テキスタイル(生地問屋)として起業した。37年に亘り不況の波にのまれることなく大きな財産は残すことはできなかったが無事に会社を清算し、終の棲家であるマイホームにて年金暮らしを満喫していた

今から思えば、父は兄弟妹の三人に対して分け隔てることなく、個々の性格を認めたうえで兄弟妹の関係が仲良くできるように調整を図っており、決して陰口を言うことはなかった。

そして、兄と私には、会うたび、ビジネスで重要な・・大袈裟にいえば「奥義」を伝え続けた。

「奥義」は『目に見えないものを大切にしなさい。目に見えるもの以外で世の中は動いている』である。

兄も私もこの奥義をビジネスの中で自然に活用することができて、大変な効果を得ることに繋がっている。

私にとっては、この「奥義」こそが、最も価値のある相続財産である。

目に見える財産は不要ともいえる。

ただ、実家の持ち分は愛着という視点から少しだけ持ち分を持った。

『兄弟姉妹仲良く、円満に相続してほしい』と願うなら、相続に関係なく、日々の生活の中で子供たちに対し、公平(平等)に接することや、目に見えないものを日々与え続けることが、円満な相続の秘訣なのではないかと思う。

すなわち、生前の子供達への接し方の成否が相続という機会に顕在化するのだと思う。

投稿者プロフィール

堀田 直宏
堀田 直宏株式会社ダントラスト 代表取締役
<事務所名/肩書き>
株式会社ダントラスト 代表取締役
株式会社 ムサシコンサルティング 代表取締役

宅地建物取引士
(公認)不動産コンサルティングマスター相続対策専門士
コミュニケーション能力認定1級
認定ファシリテーター(㈱プレスタイム社)
 
<プロフィール>
1969 年生まれ、東京都杉並区出身。
投資不動産デベロッパーにて、執行役員として150 棟を超えるマンション開発に携わる。
多くの専門家とのネットワークと、用地買収に不可欠な権利調整の実務経験を活かし、権利調整を得意とする、超実行型不動産コンサルティングとして、平成25年3月に独立開業。
令和元年(公益財団法人)不動産流通推進センター主催の事例発表会にて、近隣紛争中の再建築不可物件を再建築可能にした事例(埼玉県飯能市の潜在空き家の活用事例)にて、「不動産エバリューション部門」優秀賞を受賞。
現在、全日本不動産協会東京本部中野杉並支部行政担当(杉並区)副委員長を務め、行政が抱える不動産課題の解決に尽力している。

<セミナー講師及び相談員等の活動実績>
・全日本不動産協会 神奈川支部及び神奈川本部海老名支部の法定研修会をはじめ、某生命保険会社の社内研修、不動産コンサルティング協会(東京支部、静岡支部)・NPO法人相続アドバイザー協議会・一般社団法人全国空き家相談士協会・その他建築会社の家主向けセミナーなど数多くの講師を務める。

<主な著書など>
相続コンサルの奥義(プラチナ出版)
週刊住宅 平成30年11月12日号から「誰でもできる権利調整コンサル」を隔週掲載

週刊現代 
平成31年1月5日、12日号「死ぬ前と死んだあと」特集に寄稿
令和元年9月14日、21日号 『あなたの人生、老親の人生「最後の一週間」の過ごし方』特集に寄稿