不動産の現場から民法を考察する。第3回

~『第一編総則 第四章「物」第86条(不動産及び動産)』③~

条文:土地及びその定着物は、不動産とする。

2.不動産以外の物は、全て動産とする。

 

(考察)

不動産である定着物の建物などは、その物を構成する各材料は動産である。

動産である材料の集合物が、どのような状態になれば、動産ではなく不動産に変わるのだろうか。

答えは、「建物表示登記」が完了したときである。これは、建物認定という一定の要件を満たした時に、不動産である建物として認められるのだが、人間でいえば「出生届」である。

余談ではあるが、通説として、法律では人間の権利能力について出生を始期としている。具体的には胎児の体全体が母体から出た時を基準としており、母体の中にいる胎児には権利能力は無いとしている。(※1)生まれた直後から権利能力はあるものの、戸籍法第49条、第52条に従い「出生届」によって、子の氏名や父母との続き柄、生まれたとき、生まれたところ、父と母に関する情報などを各行政長に提出しなければならない。

これと同じように、動産の集合物が、不動産の建物として認められるのは、建物表示登記手続きが完了したときである。よって、表示登記が未了の動産の集合体は、外見的に建物として使用できると見えたとしても、建物として使用する権利は存在しない。(人と違い、出来上がった瞬間に権利があるのではなく表示登記手続きが完了したことをもって権利が発生する)

 

では、表示登記手続きを完了させるにどのようにすればよいのか、表示登記手続きは、動産の集合物である建物と思えるものが、適正な不動産建物として造られていなければならない。

この認定を「建物認定」といい、建物認定を知るには、先ず建物の定義を知らなければならない。

 

建物の定義は、民法には規定がなく、建物に関連する建築基準法と不動産登記法の二つの法律が次のように定めている。

「建築基準法」第2条1項では、建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、以下略。

「不動産登記法」不動産登記事務取扱手続き準則136条第1項では、「建物とは屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した構造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」

一般的には、「外気遮断性」「土地定着性」及び「用途性」を備えた建築物が建物として認定される。

このような建物の定義に則っている事の調査を行うのが、土地家屋調査士である。

登記といえば、司法書士と勘違いする人も多いが、建物の表示登記や増築などの登記は、土地家屋調査士が調査しなけば登記できず、土地家屋調査士の専属的業務なのだ。

よって、土地家屋調査士が調査し、建物認定が充足されることを判断したうえで、建物の登記記録として、所在の市区群町村および字、建物の地番、家屋番号、種類、構造、床面積、付属建物、表題部所有者等について登記申請したものが、表題部として登記簿に記載され、めでたく、建物不動産として認められるのだ。(出生)

 

その後、同建物の所有権が誰にあるのかを示すために権利部分(甲区)に保存登記がおこなわれるが、権利関係の登記手続きは司法書士の業務となるため、新築建物が完成すると、土地家屋調査士と司法書士が連携して登記手続きを行うことになる。(司法書士と土地家屋調査士の両方の資格を保有している事務所も多い)

開発会社が新築した建物は、表題部分の申請者が開発業者名で、所有権の保存名義が、購入した一般消費であることも多い。(必ずしも両方が同じ名義とは限らない)

 

(まとめ)

数十年前に建築された建物では、建物の登記がなされていないことが散見される。

これは、表示登記に必要な建物認定を免れるような建築物(いわゆる違法建築物)を建築した結果や、土地家屋調査士や司法書士の費用を無駄と考えた結果のことが多い。

登記は第三者への対抗要件を満たすものであるので、自分の財産を守るためにも登記は必要である。しかし、自分の財産を守るためだけでなく、建物認定を受け表示登記を行った建物には、建築基準法第1条(※2)のとおり、公益的意義が内包されている、動産の集合物が不動産として認定され、社会活動の基盤として活用するには、建物の表示登記は最低条件なのだ。

よって、登記されていない建物は不動産ではない。といえる。

 

(※1:胎児には相続権がないので、親の死後に生まれた子供には相続権がない。しかし、不法行為によって死亡した場合の損害賠償請求については例外的に「胎児を生まれたものとみなす)としている)

 

※2:(目的)この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。

投稿者プロフィール

堀田直宏
堀田直宏株式会社ダントラスト 代表取締役
<事務所名/肩書き>
株式会社ダントラスト 代表取締役
株式会社 ムサシコンサルティング 代表取締役

宅地建物取引士
(公認)不動産コンサルティングマスター相続対策専門士
コミュニケーション能力認定1級
認定ファシリテーター(㈱プレスタイム社)
 
<プロフィール>
1969 年生まれ、東京都杉並区出身。
投資不動産デベロッパーにて、執行役員として150 棟を超えるマンション開発に携わる。
多くの専門家とのネットワークと、用地買収に不可欠な権利調整の実務経験を活かし、権利調整を得意とする、超実行型不動産コンサルティングとして、平成25年3月に独立開業。
令和元年(公益財団法人)不動産流通推進センター主催の事例発表会にて、近隣紛争中の再建築不可物件を再建築可能にした事例(埼玉県飯能市の潜在空き家の活用事例)にて、「不動産エバリューション部門」優秀賞を受賞。
現在、全日本不動産協会東京本部中野杉並支部行政担当(杉並区)副委員長を務め、行政が抱える不動産課題の解決に尽力している。

<セミナー講師及び相談員等の活動実績>
・全日本不動産協会 神奈川支部及び神奈川本部海老名支部の法定研修会をはじめ、某生命保険会社の社内研修、不動産コンサルティング協会(東京支部、静岡支部)・NPO法人相続アドバイザー協議会・一般社団法人全国空き家相談士協会・その他建築会社の家主向けセミナーなど数多くの講師を務める。

<主な著書など>
相続コンサルの奥義(プラチナ出版)
週刊住宅 平成30年11月12日号から「誰でもできる権利調整コンサル」を隔週掲載

週刊現代 
平成31年1月5日、12日号「死ぬ前と死んだあと」特集に寄稿
令和元年9月14日、21日号 『あなたの人生、老親の人生「最後の一週間」の過ごし方』特集に寄稿