不動産の現場から民法を考察する。第2回 

『第一編総則 第四章「物」第86条(不動産及び動産)』(2)

(条文)

土地及びその定着物は、不動産とする。

2.不動産以外の物は、全て動産とする。

(考察)。

世の中の「物」は、動かない物(不動産)と動く物(動産)の2種類しかないのだ。

それらの物を我々は活用し、取引しながら生活している。

そもそも、民法は、人と人との経済活動を支える法律であり、民法が大切にしている大きな価値は①「その人の意思を大切にすること」②「取引などがスムーズに行われる」とのこと。(著者:吉田利宏。発行所:ダイヤモンド社「元法制局キャリアが教える民法を読む技術・学ぶ技術」より。)であるとのこと。

 

民法が大切にしている①②のためには、取引の対象物は、動かない(流動性が低い)不動産と、動く(流動性が高い)動産に分ける必要があったのだろう。

不動産は、低流動性、代替不能、高財産価値、などの要素があることから個々の取引を厳格化し利便性よりも取引の安全性を重視する。

他方で、動産は高流動性、代替可能、低財産価値などの要素があることから個々の取引を簡素化することで取引の安全性よりも利便性を重視する。

このような分別によって、人と人の経済活動となる物の特性を生かしたうえで、①②の実現を目指しているのではないだろうか。

法律に詳しくない消費者が一般生活で当然と思われる行為が、不動産取引では通用せず、とても煩雑な手続きを必要とするのは、法律が大切にしている①②が根幹にあるからなのだ。

特に、不動産を売買する人は、売却では「不動産という財産を換金したい」。購入では「家族で安心安全に住める家が欲しい」など、様々な目的を満たすために不動産を取引物とする。

その様々な目的こそが、民法が大切にしている「その人の意思を大切にすること」にもつながっているのは明らかだ。

(まとめ)

よって、不動産業者は購入者が自分の購入目的を満たすことができうる不動産か否かを判断するために、購入の際は不動産調査を、売却の際は代金支払い能力等の調査を行う必要がある。不動産業者は取引の報酬だけでなく、お客さまの意思を大切にすること、取引をスムーズにおこなうことが、不動産取引における法令順守の第一歩なのではないだろうか。

投稿者プロフィール

堀田 直宏
堀田 直宏株式会社ダントラスト 代表取締役
<事務所名/肩書き>
株式会社ダントラスト 代表取締役
株式会社 ムサシコンサルティング 代表取締役

宅地建物取引士
(公認)不動産コンサルティングマスター相続対策専門士
コミュニケーション能力認定1級
認定ファシリテーター(㈱プレスタイム社)
 
<プロフィール>
1969 年生まれ、東京都杉並区出身。
投資不動産デベロッパーにて、執行役員として150 棟を超えるマンション開発に携わる。
多くの専門家とのネットワークと、用地買収に不可欠な権利調整の実務経験を活かし、権利調整を得意とする、超実行型不動産コンサルティングとして、平成25年3月に独立開業。
令和元年(公益財団法人)不動産流通推進センター主催の事例発表会にて、近隣紛争中の再建築不可物件を再建築可能にした事例(埼玉県飯能市の潜在空き家の活用事例)にて、「不動産エバリューション部門」優秀賞を受賞。
現在、全日本不動産協会東京本部中野杉並支部行政担当(杉並区)副委員長を務め、行政が抱える不動産課題の解決に尽力している。

<セミナー講師及び相談員等の活動実績>
・全日本不動産協会 神奈川支部及び神奈川本部海老名支部の法定研修会をはじめ、某生命保険会社の社内研修、不動産コンサルティング協会(東京支部、静岡支部)・NPO法人相続アドバイザー協議会・一般社団法人全国空き家相談士協会・その他建築会社の家主向けセミナーなど数多くの講師を務める。

<主な著書など>
相続コンサルの奥義(プラチナ出版)
週刊住宅 平成30年11月12日号から「誰でもできる権利調整コンサル」を隔週掲載

週刊現代 
平成31年1月5日、12日号「死ぬ前と死んだあと」特集に寄稿
令和元年9月14日、21日号 『あなたの人生、老親の人生「最後の一週間」の過ごし方』特集に寄稿